【スポーツビジネス】 大学スポーツに米国の手法 甲子園ボウル、学生野球で収益確保 日本版NCAAでさらなる強化へ©2ch.net

多角的に進んでいるスポーツビジネスの世界。日本で“新たな息吹”といえるのが、大学での展開だ。文部科学省が日本版NCAA(全米大学体育協会)設立を打ち出したことを受け、近大(大阪府東大阪市)が学内スポーツの産業化に取り組むなど、関西でも動きが活発化してきた。(坂井朝彦)

■近大とアンダーアーマーが提携

 「スポーツの産業化を目指しながら、(将来的には)観客動員などでも収益をあげたい」

 4月20日、米スポーツ用品大手「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドーム(東京都江東区)との包括連携を発表した近大の中島茂理事は、大きな目標をぶち上げた。

 包括連携の中身には、学内スポーツの収益事業化が含まれる。NCAAをはじめ、先行する米国の事例をドームと組んで取り入れ、収益の確保→各部への再投資→さらなる強化…の好循環を生みたい考え。3年後に迫った2020年東京五輪を念頭に置いたプロジェクトだ。

 近大は世界初の完全養殖クロマグロ近大マグロ」のブランド化に成功した実績がある。スポーツ事業では当面、各部で異なっているロゴなどを統一し、近大ブランドを確立。ユニホーム販売などによる収益確保を目指している段階だ。

 単純な営利事業ではなく、ドームの三沢英生取締役は「選手が存分に暴れられる環境をつくる」と強調する。収益は遠征費や有望な人材の招聘(しょうへい)といった強化の原資となる。

 NCAAのように、将来的にはテレビ放映権料や入場料による収入も視野に入れており、鼻息は荒い。

■日本政府の後押し

 文科省は成長戦略の一環として、日本版NCAAを来年度中に創設する見通しだ。こうした方針を受け、関西圏でも複数の大学が連携し、受け入れ態勢を整えようとする動きがある。「大学スポーツ推進コンソーシアム in Kansai(仮称)」の設立検討会がそれだ。

 1月から定期的に開催されており、世話人を務める立命大スポーツ健康学部長の伊坂忠夫教授(スポーツ科学)は「大学スポーツの価値をどう上げていくか」と検討会の核心を語る。

 少子高齢化の影響だけでなく、さまざまな要因が相まって関西の大学スポーツ界は一部を除き、陰りが見える。「学生でお金もうけをしろということか…」と日本版NCAA設立に批判的な意見もある。

 こうした現状を踏まえ、検討会ではまず、「アスリートを理解し、育てたい」との共通認識を広めることを重視する。全国の「ロールモデル」とすべく、大学間のアスリート養成ノウハウの共有や、交流戦の拡大、優秀な選手の独自表彰-などが議論の俎上に上がっている。コンソーシアムには15~20校の参加を想定し、今年度中の設立を目指している。

■大学スポーツの発展が日本の改革に

 伊坂教授は「従来は(大学スポーツを)『支える』『観(み)る』の考え方が不足していた」と話す。「『地元の誇りになるような学生がいるなら応援に行くか』とか『支えてあげよう』とか。そういう思いが出てくれば。うまく回ればマネタイズ(収益事業化)にもつながる」と強調する。

 実際に、武庫川女子大と関学大(いずれも兵庫県西宮市)が入場無料ながら、観戦客の利便性を考えて平日の夜にハンドボールの親善試合を行うなど、具体的な取り組みも始まっている。

 関係者が口をそろえるのは「すぐに収益化ができると考えるのは虫のいい話」という点だ。米国の本家NCAAには一世紀以上にわたる伝統が存在し、大学スポーツを一般人が楽しむ文化が米国民に深く浸透している。一朝一夕に追いつくはずはない。

 ドームの三沢取締役は「大学スポーツの発展、大学改革の起爆剤となり、日本の改革につながる」と力説する。伊坂教授も「大学スポーツが注目されるチャンス。一時の打ち上げ花火ではなく、長く続かないと…」。つまり、日本のスポーツ文化そのものを変える取り組みでもあるのだ。国主導ではなく、地域からの挑戦にこそ、成否のカギが隠されていると言えるのではないだろうか。


2017.9.19 15:00
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